Photoshop やウルトラキッドなどのレイヤ管理機能を持ったツールでは、線画レイヤの作成が必要になってきます。
こういう絵の場合なら、あらかじめ線画と色のレイヤを分けておくことで、このように、各要素(ここでは線画・人物の色・背景)毎に自由に編集することができます。また、肌・髪・服といったパーツ毎にレイヤを作れば、後からそのパーツにだけ特殊効果を加える、といった使い方もできます。
こういう使い方をするのに必要なのが、線画レイヤです。上の例では3枚レイヤがありますが、一番上にあるのが「線画レイヤ」です。これを見るとわかるように、線画レイヤは線以外の余白部分が透明になっていて、下の色が透けて見えるようになっています。ちょうどアニメのセル画のような感じです。
キャラクターものに限った話かどうかは知りませんが、この線画レイヤを作れるかどうかが、レイヤ機能付きツールでうまくイラストを描くポイントになってくるといえます。
スキャナから取り込んだ下描きを元にパソコン上でタブレットを使って線画を描き起こしたり、パス機能を使って線画を作り直したりする場合は、それがそのまま線画レイヤとなります。しかし、前者はタブレットを持っていないとできませんし、後者はパスの扱いになれていないと難しい作業です。最も簡単な線画レイヤの作り方は、スキャナから取り込んだ線画を線画レイヤに変換することでしょう。
スキャナから取り込んだ線画は、白黒のグレースケールになっています。この画像から白い部分を消してしまえば、線画レイヤとなります。線だけを残してこの白い部分を消す方法には、以下のような方法があります。
一番簡単で手っ取り早い方法です。
やり方は簡単、取り込んだ線画の表示されているレイヤの描画モードに「乗算」を指定する(合成方法に「乗算」を設定する)だけです。あとは、その下に「色専用のレイヤ」を重ねていけば、主線を保護しつつ色を塗ることができます。
一度白黒の2値データに変換する方法です。普通、取り込んだ画像にはグレーの部分が多く含まれていますので、これをなくして白黒2色だけの単純な画像に変換してしまえば、白い部分を容易に取り除くことができます。
取り込んだ画像は、白黒のグレー画像になっています。線画レイヤの作成とは「白い部分」を取り除くということですが、これは即ち、画像の明るさを透明度に変換するということです(白い部分ほど明るい→白い部分ほど透明になる)。
ウルトラキッドの場合は以下の通りです。他のツールでも、機能の名前が違うだけで、同様の操作で作業を行えるはずです。他のツールでの方法は、 CG 講座リンク集などで探してみて下さい。
ウルトラキッド Ver.2.0 や Photoshop では、一連の工程をアクションレコーダーに記録することができますので、一度作っておくと次から便利です。ただし、「表示マスクを削除」の工程が記録できませんので、注意が必要です。
※この方法は、 HORNET 氏のサイトからの引用です。
Adobe (アドビ)社の「 Photoshop 」では、 Ver.4.0 以降の場合、「フィルターファクトリー」内の「 Luminosity → Opacity 」フィルタ・あるいは「 EliminateWhite 」フィルタで、白い部分だけを透明化できるそうです(「アルファチャネル」と同じ効果が得られます)。
このフィルタは標準ではインストールされないそうですので、手動で組み込んで下さい。組み込み方は、インストール CD-ROM の [Goodist] フォルダ内、 [Plug_ins] フォルダにドキュメントファイルがあり、そこに記述してあるそうです。
Photoshop の廉価版である PhotoshopLE にはアルファチャネル機能が搭載されていませんが、プラグインを利用することで線画レイヤを作れます。
edesign で配布されている Eliminate White Filter を使うと白を透明に変換できるので、このフィルタを使った後で、透明保護を有効にして好きな色で「塗りつぶし」すれば OK だそうです。
Photoshop 同様、画像の明度を透明度に変換する機能が標準でフィルタになっています。
「フィルタ」→「色調補正」→「白を透明に」 これで一発です。宣伝ではあまりプッシュされていなかったので、ご存じない方が多いかもしれません。
それぞれの方法の良いところ・悪いところです。どの方法を選ぶかの選択基準にして下さい。
方法 | 利点 | 欠点 |
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「乗算」を使う方法 |
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「2値化」を使う方法 |
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「アルファチャネル」を使う方法 |
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AdobePhotoshop 、 FanfarePhotographer のフィルタ | ||
タブレットによる描き起こし |
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専門用語では「イロトレス」と言う。
肌の部分の線を茶色にする、ブロンドの髪ならば髪の部分の線をオレンジにする(「機動戦士ガンダム F91 」のセシリーなどで実際に行われていた)、というふうに、その周囲の色に合わせて主線の色を変えてやることで、絵全体が柔らかいイメージとなる。
「主線が黒いままの TV アニメの絵」と「主線の色を変えてあるエロゲーの絵」を見比べてみると、違いがよくわかる。
スキャナで取り込んだ画像は、ぱっと見画面上で直接描いたものと変わらないように見えるが、実は様々な色が散らばっている。単一色で塗られた部分でも、拡大すると非常に汚くなっていて、時には画像を圧縮する際のネックとなることもある。自動選択ツール(マジックワンド)などで取り込んだ画像を選択するとうまくいかないのもこのため。
画面上ではほとんど見分けが付かないため、完成画像をモニタで見るのみの分にはこれでも構わないのだが、僕のように印刷用途で使う場合には、出力時に線の濃さにばらつきが出てしまうことがある。
コンピュータ上で表現できる線の細さは、ドット1つの太さまでである。これ以上の細い線は表現できないが、線の色を薄くすることで、細く「見せかける」ことは出来る。
白黒2値化の機能は、ある一定の濃さ(しきい値)を基準にそれ以上を全て黒、それ以下を全て白という風に変換するので、薄い色で作られた細い線は消えてしまう、または途切れてしまうことが多い。
基準となる濃さを変えてやることでこういった線を残すことも可能だが、今度は他の部分の線が太くなってしまうという現象が起こる。これは、線の周囲にある薄い部分までが線と見なされてしまうからである。
単純2値化のしきい値(基準値)は、プレビューを見ながら、あるいはアンドゥを繰り返しながら決めるのがベター。
ウルトラキッドは、マウスやタブレットの追従性が非常に悪い。カーソルを動かしてから数秒後に描画される、などということもしばしばである。そのため、タブレットでサッサッと絵を描くには非常に使いづらくなってしまっている。