ラフとは「下描きの下描き」のようなもので、全体の構成などを決めるための目安です。この段階ではそんなに細かく描き込む必要はなく、構図や人物のポーズを大まかに決めるだけです。
イメージラフは勢いが大事。今回のサンプルは、イメージとしては「春だねぇ」って感じで。元気な絵にしたいなぁとか思ってたらこういう構図が浮かんだので、ラフにしてみました。原稿は A4 の PPC 用紙(コピー用紙)です。
ちなみに、これを描く前に、イメージを固めるために5センチ四方程度の小さいイメージスケッチも描きました。
背景が描かれていませんが、イメージ自体は一応頭の中に残っているので……そう、これが大切。まず最初に、頭の中にイメージをしっかりと作りましょう。ラフ・下描きと工程を経て、そのイメージを紙の上に写し出していく感じです。
最初の「イメージ」がしっかりしていないと、配色が滅茶苦茶になったり、色塗り中にデッサンの狂いに気づいたりなんてことになったりします。
時間はあまりかけません。繰り返しますが、ここは勢いを大事にしてパッパと済ませてしまいます。
ラフを元に、細かく描き込んでいきます。原画が悪いと、どんなに塗りが上手くても完成品は絵としておかしなものになってしまいますので、ここでの妥協は禁物です。
ここではライトボックス(トレース台)を使用して、新しい紙に下描きをしています。ライトボックスを使うとラフの線が邪魔にならないので便利です。ライトボックス自体は画材店などでも売られていますが、蛍光灯と木の枠組み、それから適度な厚さのアクリル板(天板用)があればお金をかけず比較的簡単に自作できますので、用意しておくことをお勧めします。
紙を裏返して透かして見ると、デッサンの狂いがよく分かります。目の位置がおかしいとか口の角度がヤバいとか、元の向きでは気づかなかった「歪み」がハッキリと判るので、何度か裏返しながら歪みを取り除いていきましょう。ただし、絵の勢いを殺すことにもなりかねませんので、強引な修正はほどほどにとどめておきます。よっぽど狂いがひどいなら、その下書きは破棄して、一からやり直した方がよいでしょう。
またライトボックスを使って、別の紙にペン入れ。清書とも言います。ここでは PIPGMA の 0.1mm と 0.2mm でペン入れをしています。紙は一貫して A4 の PPC です。
本来は画材にもこだわるべきなんでしょうが、僕は描き味とかには全然こだわりがないので、手元にある道具で適当に済ませてしまいます(2002年現在では HI-TECH-C の 0.3mm や 0.3mm のシャープペンシルを使うこともあります。)とはいえ、プロを目指すなら画材にもこだわった方がいいのかもしれません。
ペン入れの時、下描きは目安にする程度で、じっくりとなぞりはしません。下描きをなぞることに腐心すると、線の勢いが死んでしまうことが多いです。下描きの線を外れることを恐れずに、「勢い」を大事にしてペン入れしましょう。死んだ線よりは、多少ズレていても活きのある線の方がなんぼかマシです。
思ったところに思い通りの線を引けるようになるまで、練習あるのみです。
とりあえず、終わりまで一気に描き上げましょう。はみ出した線などがかなりありますが、取り込み後のゴミ取りで一緒に修正するので、この段階では敢えて修正しません。修正液の上から描いた線は指などでこすれて汚くなってしまいがちです。ミスをした部分は×などの印を付けておいて、取り込んだ後で修正をしやすいようにしておきます。
カラーイラストでは主線(輪郭線)でなく塗りで表現する部分が多いですので、ペン入れの段階では目などは白抜きにします。また、しわの線などもあまり描き込みすぎるとかえって作業の邪魔になることがあります。後で取り上げますが、しわは塗りで再現するようにすると、絵がグッと引き立ちます。